Vol.6  「菅井さんに突撃」2017年7月

今年、還暦を迎えられた菅井さんは教室の大先輩。
ロイさんが来日する前からカルカッタで学ばれていた貴重な経験をお持ちです。
教室や演奏会での素晴らしい演奏は勿論、いつも場の雰囲気を良くしてくださるムードメーカーでもある菅井さんにお話を伺いました。

 

 

栗原(以下K):菅井さんがインド音楽、シタールに出会うきっかけを遡ると、高校生の頃にバンドでギターを弾かれていたとの事ですが。

菅井(以下S):当時は、バンドでビートルズやストーンズのコピーをしてました。1975年に「モンタレー・ポップ・フェスティバル(1967年6/16〜18)」という野外コンサートの映像が日本で放映されて、そこでラヴィ・シャンカールとアララカの演奏を観たんですよ。

K:おーっ、そこから、もしや?

S:そう、シタールを買いに行ったんですよ。インドに。1979年の夏でした。

K:おおおっ、すごい行動力!!当時はガイドブックなども無かったですよね?

S:ボンベイ(ムンバイ)、デリー、カルカッタ(コルカタ)と回って、楽器を手にして帰ってきたんだけど、 シタールは独学で学べるものではないじゃないですか?

K:ハイ。

S:楽器を購入したところで10ページくらいの教本を貰ったんですけど、独学では無理なので、27歳の時にインドに習いに行くことを決めました。

K:大学卒業後、大学病院で働かれた後の1984年9月、再びカルカッタに。

S:最初はIrfan Khanさんというサロード奏者のもとで、Irfanさんの家庭で生活を共にしながら学ぶというスタイルで午前中はシタールを、午後はタブラを学んでいたんだけれども、半年経った頃、Irfanさんから「どっちをやるんだ?」という事になって、シタールを選んだの。

K:そこからより一層レッスンも熱が入り?

S:いや、ちょうどその頃、インド政府からの依頼でIrfanさんが長期でアフガニスタンに出張することになってしまったんですよ。
僕自身もビザの更新の手続きであちこちに移動することになってしまって、コダイカナルという南インドの避暑地で練習の日々を過ごしていました。

K:あららら、これからという時に先生が去ってしまった。この頃にはまだロイさんには出会われていなかったのですか?

S:まだですね。Irfanさんが、Hiren Roy(ロイさんのお父さん。伝説的な楽器製作者)の楽器を使っていたこともあり、長男のHimangshuさんと仲が良かったので、最初に楽器を作って頂いたのですが、1987年から再び学びに訪れた時にどうしてももう一本作って欲しくてHimangshuさんにお願いに行ったんだけど「お前には以前に作ったから、もう作る必要がないだろ」と最初は断られてしまったんだけど、それから工房まで20回程お願いに行って願いが叶いました。数ヶ月掛かる製作中には練習用の楽器も貸して頂いたり、以来、Himangshuさんが来日される時にはうちに泊まったり家族ぐるみの付き合いでした。

K:そうだったのですね。当時はHiren Royさんも工房にいらっしやったんですよね?どんな方だったのですか?

S:ただ者じゃない感じがして、発しているオーラが凄かった。話しかけることができないくらいでした。

K:へえぇー。

S:初めて先生(ロイさん)にお会いしたのは共通の友人の家で何人か集まった時だったんだけど、その時実は先生がシタール奏者だということを知らなかったんですよ。その時に友人にシタールで「何か弾いてみろ」と言われてRaga Bihagを弾いて。

K:えええっ?何人も集まった仲間の中にロイさんもいて、ロイさんがシタール奏者であることをご存知になる前に先生の前で
何か不思議な感じですね。その時のロイさんもご自身がシタール奏者であることを仰らなかったんですね?
その時のロイさん、どんな反応でしたか?
 
S:喜んでくれてたと思う。外国人である日本人がインド音楽を学びにやってきて、一生懸命挑戦して。

K:おおおっ。嬉しいですね。インド音楽を学んでいて発祥の地の方に喜んで頂けるのは本当に嬉しいと思います。

S:3度目の渡印の時にやっぱりIrfanさんはアフガニスタンに行ってしまっていて学ぶ機会が無くて困っていた。
そんな時ジャワリ(註1)してもらいに工房に行くとHiren Royさんが「息子が教えているよ」と。
註1:シタールの弦を支えるブリッジの部分を調整する作業。音色を決定する大切なこの箇所は弾けば弾く程削れてしまい調整が必要になります。

K:おおっ、Hiren Royさんが?

S:そう。それから悩んでいたんだけど、当時周りにいた仲間も皆、後押ししてくれて。

〜続〜

 

 

編集途中記


菅井さんの大切な思い出、快くお話を聴かせて頂き感謝の気持ちでいっぱいです。
7/16、7/29と素敵な演奏をたのしみにしております!

文責:栗原 崇